北海道はほかのどの地域よりもすばらしい海と畑の産物に恵まれています。
私たちはこの自然の恵みを大切に、醤油・味噌の食品づくりを通し、北海道の食卓を豊かにすることを使命としてきました。私たちは令和3年(2021年)に創業130周年を迎えます。これまで幾度となく、経済や社会の変化に直面してきました。そんな中、私たちは伝統を重んじ、独自の製造技術を守りながら、北海道のおいしさを皆さまの食卓にお届けしてきました。
「おいしく安全な食品」を通して、消費者の皆さまと信頼関係を築き上げられたからこそ、企業活動を続けて来られたと考えています。私たちはこれからも皆さまとの信頼関係を礎とし、和食の素晴らしさを未来へ継承していきます。
「北海道の蔵元」として、北海道素材のおいしい食品を皆さまの食卓へお届けすること。食生活の向上、ひいては、地域経済の発展に貢献していきたいと思います。
福山醸造株式会社 代表取締役社長
福山 耕司KOJI FUKUYAMA
福山醸造株式会社
営業サポート部 マーケットサポート課 課長
福山 誠司SEIJI FUKUYAMA
新商品開発プロジェクトチームは本社営業や製造など、部門の垣根を越えたメンバーで構成されており、春夏、秋冬と年に2回の新商品発表に向け商品開発に取り組んでいます。
福山誠司は本プロジェクトチームの要となる人物。歴史あるトモエブランドの明日を背負い、日々試行錯誤を繰り返しています。
近年、もっとも記憶に残る商品開発は、2016年に誕生した道民の醤油、道民の味噌からなる「道民シリーズ」です。「道民シリーズのきっかけは、大手メーカーによる鮮度保持容器を採用した醤油の発売でした。」鮮度保持容器は醤油の鮮度を90日間保持できるという画期的なもので、商品は大ヒット。地域性が色濃く出る醤油市場の中でも、福山醸造は多くのシェアを失いました。「地元メーカーとして、少しでも北海道内のシェアを取り戻したい。」道民シリーズの開発の背景には、トモエブランドのプライドがありました。
「長く北海道で商売を続けてきた私たちですが、新商品を開発する上で改めてトモエブランドの強みは何かと考えました。そして、たどり着いた答えが“北海道の味覚をもっとも理解しているのは、福山醸造だ”。」ということでした。
醤油、味噌という日本人には欠かすことのできない基礎調味料を北海道で作り続けて130年弱。
道民の食卓を支え、歴史を積み重ねてきた福山醸造だからこそたどり着いた答えでもありました。
「北海道には海産物をはじめ、美味しい食材が豊富にあります。素材の旨みを活かし、引き出すことが重要です。主役はあくまでも素材。醤油は、素材をさらに美味しく食べるための、いわば引き立て役のようなものです。」と福山さん。北海道の食文化・味覚を追求し、素材の旨みを最大限に引き出す、道民のための醤油をつくる、という明確なコンセプトのもとプロジェクトチームは一念発起。
もちろん、北海道産原料にもこだわりました。鮮度保持容器にも着手し、パッケージデザインも斬新なものに。「道民シリーズ」は企業のブランディングも担う、多角的な面で福山醸造にとっての新しい一歩となりました。
「トモエの味噌じゃないと我が家の味にならないんだ、という声をお客様からいただいたことがあります。家庭の味というのは親から子へと食べ継がれるものです。
トモエブランドの永続は、弊社商品を愛用してくださる皆さまの家庭の味の永続でもあるのです。」
昔ながらの商品、築き上げた歴史を大切にしながら、食卓に馴染む新たな商品の開発にこれからも積極的に挑戦していきたいと意欲を燃やす。
「お客様にとって、誠実な企業でありたい。」という思いのもと、暮らしと食卓に寄り添った商品を生み出しています。
福山醸造株式会社
ヘルス&ビューティ事業部 H&B販売課 課長
阿部 幸代YUKIYO ABE
120年を超える福山醸造の長い歴史の中で、大きな転機となる「ヘルス&ビューティ部門」が新設されたのは2019年5月。別会社で商品開発をしていましたが、自身が手がけていた商品権利を福山醸造へ譲渡するのと合わせ、同社に入社しました。
福山醸造で新たに販売することになったのは、「まるごとピューレ北海道」、「ドライパック」「北海道のこだわりプリン」、「北海道のなめらか羊羹」 、「北海道あまざけ」の5種。いずれも北海道産の素材を使用し、『からだに優しい』をコンセプトに開発されたものです。なかでも「北海道あまざけ」は、福山醸造の米糀を使用したもので、同社をつなげるきっかけになった商品です。
現在、ヘルス&ビューティ部門で活躍するのは3名の女性陣。福山醸造の主力であるトモエブランドと並ぶ新ブランドの立ち上げに向け、奔走中です。「福山醸造に入社して、まず最初に驚いたのが同社の長い歴史でした。開拓まもない札幌から今に続く歴史の重みに、ひたすら圧倒されました。」電気が灯りはじめた開拓期の札幌で、福井県から北海道に移り醤油造りを始めた先人たちの不屈の精神に身が引き締まる思いだったと言います。
福山醸造の歴史に心を動かされた阿部さんは、その思いを新ブランドのネーミングに落とし込むことを決めました。福山醸造の原料を使い、他社とタッグを組み、別工場で製造する−−。
これまで自社工場で製造したものを販売していた福山醸造にとって、「新ブランド」は同社の長い歴史において大きな革新です。
伝統と革新。福山醸造の新たな章のスタートにふさわしいと考えた新ブランド名は「ヤマト福山商店」。福山醸造の創業当時の社名を、あえて新ブランド名に選んだのです。「ヤマト福山商店は、福山醸造にとって新しい挑戦です。だからこそ、開拓の地で商いに挑戦した先人の意思を引き継ぎたいと思ったんです。先人たちが切り拓いた歴史の上に、いま私たちが立っているということを大切にしたいと考え、あえて原点でもあるヤマト福山商店という名前に決めました。」老舗企業の安心と信頼、先人から今につながる福山醸造のチャレンジ精神が、この新ブランド「ヤマト福山商店」には込められています。
ヤマト福山商店の新商品開発にあたり、注目しているのが福山醸造の「米糀」です。米糀のプロフェッショナルである福山醸造だからこそ可能にする、米糀を使用した新商品のリリースを目指し日々研究を進めています。「福山醸造の新ブランドにふさわしい商品にしなくては、とプレッシャーもあります。」現在開発中の「糀パウダー」は、夢の実現の第一歩です。「手軽に甘酒をつくったり、味噌汁に加えたり、ヨーグルトに混ぜ合わせるなど、米糀に注目が集まる今、皆さんがより手軽に米糀を利用できるよう考えた商品です。」米糀のポテンシャルを最大限に引き出したいと考え、化粧品開発も視野に入れています。
『糀で実現する健康と、キレイ』を目指し、「自社オリジナルの米糀もいずれ開発したいです。」
北海道醤油株式会社(製造工場)
製造管理部 品質管理課 課長代理
霜野太虹TAIKOU SHIMONO
2011年に入社した霜野太虹さんが勤める苗穂の醤油工場は、大正7年に設立。その後、高度経済成長を経て、大量生産が可能な設備が整えられましたが、一方で、全く変わらないものもある、と霜野さんは話します。
「作業時間の短縮が必然とされる中であっても、レンガ蔵で6ヶ月以上ゆっくりと時間をかけてもろみを発酵させています。ゆったりと流れる時間が美味しいもろみを育て上げるというのは、今も昔も変わらない工程です。」醤油の醸造は非常に繊細な作業。小さな変化も、味や品質に大きく関わってきます。「もろみ作り一つとっても、人の手を介しての作業は必要です。どれだけ機械化が進んでも、人の経験や勘が結局は生かされるのです。それが醤油づくりの難しさであり、面白さですよね。」と霜野さんは胸を張ります。福山醸造が長く愛される理由は「古いものを大切にすることと、新しいものを取り入れることのバランス感覚」にあると、霜野さんは語ります。「先輩社員から聞いた話なのですが、お味噌を袋に詰めて販売したのは当社が北海道初だったそうです。カップに入れたのも北海道内で二番目、醤油をペットボトルに入れたのも比較的早かったと聞いています。福山醸造は新しくて良いものを積極的に取り入れる会社なんですよ。」
容器の変更は工場の設備や工程にも大きく関わることです。「時代に合った容器を模索し、積極的に取り入れる姿勢も、そのひとつなんです。」と霜野さん。「これからの日本はさらに少子高齢化が進み、人口も少なくなり、家族構成も変わっていきます。少し前までは1Lの醤油が主流でしたが、使い切れないという声をよく聞くようになりました。最後まで使い切ることのできる小ぶりな容器や、空気に触れず、長く鮮度が保てる容器など、各家庭の食卓に馴染み、そして愛されるものを追求しています。」
入社当初よりも、商品数はさらに増え、工場の作業はより複雑化しています。「それでも手間暇を惜しまずお客様のニーズを追求し、食卓に貢献することが、北海道では老舗と呼ばれる福山醸造の存在意義だと思い、日々醤油づくりを行っています。」